上高地の価値を未来へつなぐ


人為的に改変された梓川を本来の姿に再生し、より安全な利用環境を整えるプロジェクトです。上高地が長年抱える管理用道路問題を解決します。

解決したい課題:なぜこのプロジェクトが必要なのか?

上高地を流れる梓川には、安全な山岳利用に必要な施設が所々に整備されています。

徳沢、横尾地区の「管理用道路」もその一つです。山小屋や公衆トイレの維持、傷病者の搬送等のために、河川内に仮設橋や土砂堤防を築き「仮の道路」が作られています。

この道は、国立公園になくてはならない重要なインフラですが、以下のような課題を抱えています。

課題1 自然環境や景観の阻害

河川内に作られた仮設橋や土砂堤防は、河川流路を狭く単調化させ、ケショウヤナギやチョウ類、水生生物等などの生息環境を変化させるとともに、景観を大きく損ねています。

また、出水で流され、その都度復旧工事を繰り返しており、重機による作業が動植物への脅威ともなっています。

課題2 安全性

管理用道路は川の中にあるため、出水により度々流されます。近年は、管理用道路が流されるような大雨が、毎年発生しており、安全上も大きな問題となっています。

梓川本来の流れの再生と出水時にも通行できる安全な管理用道路の整備が、長年の課題です。

豪雨で寸断された仮設道

プロジェクトの内容

課題解決のため、松本市では2015年から調査研究に取り組んできました。約6年にわたり、地形や植物など各分野の専門家や関係機関と検討を重ねてきた結果、管理用道路の再整備と土砂堤防撤去を内容とする計画が固まりました。

2021年度に上高地「再生と安全」プロジェクトと名付け、一部の工事に着手しました。

上高地鳥瞰図

計画1 管理用道路の再整備

新たな管理用道路のルートは、梓川左岸に可能な限り寄せ、増水時に流されてしまうリスクを低減しつつ、川を本来の川幅に極力戻します。また、手つかずの自然は可能な限り残し、人の手が入った部分に再整備することで、環境への影響を最小化します。


計画2 新村橋の架替え

現在は歩行者用のつり橋ですが、管理用車両が通れる橋に架替えます。また、梓川を一跨ぎする橋とすることで、自由な川の流れを確保します。なお、新たな橋は、地形改変が最も小さい形式であるアーチ形式を採用します。


計画3 河川内の人工物撤去

現状の仮設橋・土砂堤防等を撤去し、梓川の自然な流れ【網状流路】を再生します。


計画4 付帯事業

管理用道路の整備と合わせ、電力ケーブルや光ケーブルの埋設を行います。これらにより、電力の安定供給等による防災体制の強化、安心・安全な利用環境整備、自家発燃料(1日あたり約100L)の削減による環境負荷低減を図ります。

全体スケジュール

2021年度の閉山後から工事に着手し、2028年度の完了を目標に事業を進めています。

その他説明資料